うつ病とは何か?うつ病についての基礎知識
うつ病とは?
うつ病・・・気分がひどく落ち込んで憂うつになる、何をするにもやる気が出ないといった精神的な症状に加えて、眠れなくなったり、疲れやすくなったり、体がだるく感じたりする身体的な不調が現れる、普段の生活が非常につらくなってしまう病気です。
単なる一時的な「気分が落ち込み」や「疲れ」とは違い、抑うつ状態(強い悲しみや絶望感、気力の低下など)が1〜2週間以上続き、徐々に日常の活動や楽しさを感じることが困難になって生活に大きな支障をきたします。
また、眠れない、だるい、食べられないといった症状も現れるのが特徴です。
うつ病は誰にでも起こり得るものです。
脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、感情やエネルギーの調整が上手くいかなくなるために、心身に不調が現れてしまうのです。
周囲のうつ病に関する誤解が解けて、正しい知識と理解が広まってくれることを心から願っています!
うつ病の症状
うつ症状は、精神と身体の両方に現れます。
下記のような症状が1〜2週間以上続く場合には、うつ病であることを疑い、精神医療の専門家に相談することをお勧めします。
- 持続的な気分の落ち込み:常に悲しさや虚しさを感じ、理由がなくても泣きたくなることがあります。これが数日や数週間ではなく、長期間続きます。
- どうしようもない不安:明確な原因が分からないのに、何か悪いことが起きるのではないかという漠然とした不安を感じます。日常に対する不安だけでなく、将来に対する不安も強く抱くことがあります。
- 焦燥感:心がザワザワして何かしなければならないように感じるのに、何も手につかない、あるいは、やるべきことが明確でない場合に起こる感覚です。「仕事に復帰できるのか?」「自分は元の状態に本当に戻れるのか?」「いつになったら治るのだろう?」と焦りを感じます。
- 興味や喜びの減退:以前は楽しかった趣味や活動に興味が持てなくなり、何をしても楽しさを感じられない状態になります。感情があまり働きません。
- 集中力や思考力、記憶力、判断力の低下:本やテレビを見ていても内容が頭に入ってこない、仕事や勉強での集中力が続かない、買い物へ行っても何を買っていいか決められない、新しいことを覚えられないなど、考えがまとまらなくなることがあります。
- 自己評価の低下:自分を価値がないと感じたり、自分を責めたりする気持ち(自責の念)が強くなります。これにより、他人に対して申し訳なさや罪悪感を抱きがちです。
- 絶望感や無力感:何をしても無駄だと感じ、希望を持てない状態が続きます。未来に対しても非常に悲観的になり、「自分には何もできない」という絶望感や無力感が深まります。
- 反芻思考:過去の出来事や自分の感情、失敗、後悔などを何度も繰り返し思い浮かんでしまいます。「あの時こうしていればよかった」「なぜあの時あんなことを言ったんだろう」といったネガティブな思考から抜け出すことがなかなかできない状態です。
- 死や自殺についての考え(希死念慮):うつ病が重くなると、死にたいという気持ちや自殺を具体的に考えることが増えます。これが最も危険な兆候の一つです。
- 疲労感や倦怠感:十分な休養を取っても、常に体が重く感じ、疲れが取れない状態が続きます。日常的な活動すら面倒に感じることもあります。
- 睡眠障害:夜に寝つけなかったり、途中で何度も目が覚めてしまう「不眠」が典型的です。一方で、過度に眠ってしまう「過眠」も現れることがあります。
- 食欲や体重の変化:食欲が極端に減少し、体重が急激に減ることがあります。または、逆に過剰に食べてしまい、体重が増えることもあります。食に対する関心が著しく変わるのが特徴です。
- 痛みや体調不良:頭痛や肩こり、腰痛、腹痛、口の中の違和感、手の震え、手足のしびれ、胃の不快感、めまい、吐き気、動悸、下痢、便秘、息苦しさ、過呼吸などの様々な症状が見られます。
- 動きが鈍くなる:動作が遅くなり、話すスピードや内容がゆっくりになったり、無気力で何もできなくなることがあります。反対に、落ち着きがなくなり、無目的に動き回ることもあります。
- 感覚過敏:音や光から過剰な刺激を受け取ってしまいます。テレビの音、人の話し声、ドアを閉める音、太陽の光、部屋の電気の明かりなどの刺激が敏感になり、ダメージを与えます。
- 性欲の減退:性的な欲求が減少し、性行為に対して興味を失うこともあります。
精神的な症状と身体的な症状が同時に現れることが多いです。
また、うつ病の症状は、午前中(特に朝方)の調子が一番悪く、午後から夕方にかけて改善してくるなど、日動変動が起きます。
日内変動・・・うつ病に関連する症状の強さが一日の中で変動する現象のことです。
朝なかなか起きられず仕事や学校を休んだものの、午後からは体調が良くなってくるなど、周囲からはサボっているように見えてしまうかもしれませんが、決して本人は怠けているわけではなく、非常に苦しんでいるのです。
うつ病になりやすい性格とは?
うつ病の発症には、性格や気質も大きく影響を与える要素の一つです。
- 完璧主義
- 責任感が強い
- 依存性が強い(他者承認欲求)
- 内向的で感情を表に出しにくい
- 否定的な思考傾向
- 頑固で柔軟性がない
- 高い共感力(エンパシー)
- 執着気質
- メランコリー親和型気質
すべての人がこれらの特徴を持っていればうつ病になるわけではありませんが、特定の傾向がある人は発症リスクが高まることが知られています。
完璧主義
完璧主義・・・何事も完璧にやらないと気が済まない性格。
このような性格の持ち主は、自分が思い描いた理想に到達できないときに強い挫折感を感じます。
また、自分に厳しいだけでなく、他人に対しても同様に高い期待を抱くことが多く、その期待が裏切られたときに人間関係のストレスを生じやすくなります。
責任感が強い
責任感が強い・・・自分が引き受けた仕事や役割、義務を最後までやり遂げることに強い意識を持つ性格。
このような性格の人は、他者からの期待に応えようとするあまり、自分の負担を無意識のうちに増大させてしまいます。
特に、職場や家庭で周囲の頼りにされる場面が多い場合、プレッシャーを感じやすくなります。
依存性が強い(他者承認欲求)
依存性が強い(他者承認欲求)・・・自分の価値や安心感を他人からの評価や承認に大きく依存する性格。
このような性格の人は、他人の反応に過剰に影響されることが多いです。
批判や無関心に対して非常に敏感で、少しでも否定的な反応を受けると、自己否定感が強まりやすく、心のバランスを崩すことがあります。
内向的で感情を表に出しにくい
内向的で感情を表に出しにくい性格・・・自己の内面に意識を向ける傾向が強く、自分の感情や考えを外部に伝えることを控える性格。
このような性格の人は、自分の感情を他人に伝えることが苦手で、問題が起きても相談するのをためらいがちです。
また、内向的な性格自体が悪いわけではありませんが、感情を押し込めることで、心の中でストレスが膨らみやすいという側面があります。
否定的な思考傾向
否定的な思考傾向・・・物事のマイナス面に注目しやすく、失敗や不安、困難な状況を過剰に意識する性格。
このような性格の人は、未来の出来事や他人の反応を悲観的に捉える傾向が強く、自分自身に対しても厳しい評価を下しがちです。
日常の困難や失敗を過剰に深刻に受け止める傾向があり、自分を責める習慣が形成されます。
頑固で柔軟性がない
頑固で柔軟性がない性格・・・自分の考えや価値観、行動パターンに強いこだわりを持ち、それを変えたり他人の意見を受け入れることに抵抗を示す性格。
このような性格の人は、自分の価値観や考え方に強くこだわるため、変化や新しい状況に適応するのが難しいことがあります。
特に、思い通りに物事が進まないときに、強いストレスを感じやすくなります。
柔軟性がないために、問題を解決するための代替案を見つけることが難しく、困難な状況に陥ると抜け出せなくなりやすいです。
高い共感力(エンパシー)
高い共感力(シンパシー)・・・他人の感情や状況を敏感に察知し、それに寄り添う能力が強い性格。
このような性格の人は、他人の苦しみや悲しみに強く影響を受け、自分自身がその感情を背負い込んでしまうことがあります。
周囲の人々を助けることに喜びを感じる一方で、自分自身の感情を置き去りにすることが多いです。
共感力が高すぎると、周囲の感情に引きずられやすくなり、自分の心が疲弊する結果を招きます。
執着気質
執着気質・・・特定の物事や考えに強くこだわり、感情が長期間持続する性格。
このような性格の人は、物事に対して真面目で几帳面、慎重になり、一つの事柄に深く没頭する傾向があります。
また、他者との意見の相違や対立に敏感で、争いごとに巻き込まれやすい性質を持ちます。
一度生じた感情が長く持続するため、ストレスやプレッシャーを受け続けると、心身の負担が蓄積してしまいます。
メランコリー親和型気質
メランコリー親和型気質・・・真面目で几帳面、他者への配慮が強く、責任感が非常に高い性格。
このような性格の人は、一見すると社会的に好まれる性格に思えますが、自分を犠牲にしてでも他人の期待に応えようとするあまり、ストレスを溜め込みやすいという特徴があります。
また、物事を慎重に考える傾向が強いため、失敗やミスを必要以上に気にしてしまい、自己否定感に繋がることがあります。
一部の性格がうつ病に影響を与えることはあっても、うつ病の原因そのものではなく、環境やストレスとの組み合わせで発症のリスクが高まるというだけです。
うつ病の治療法とは?
うつ病の治療は、回復までに数ヵ月から1年かかることが通例です。
しかし、同じ治療を行っても、全体の20〜30%は長期化して「難治性うつ病(うつ病の遷延化)」となる可能性があると言われています。
患者さんの症状や生活状況、回復度合いに応じて、多角的なアプローチを組み合わせて治療を行っていきます。
問診
問診・・・お医者さんが患者さんに直接質問をして、体や心の調子について詳しく教えてもらうことです。患者さんの感情や行動の変化を詳細に確認し、どんな病気か、何が原因かを探るための大事な情報を集めます。
うつ病はレントゲンや血液検査、尿検査といった一般的な身体の検査では直接的に診断することはできず、目に見えないので、本人からの問診を中心に判断していかざるを得ません。
うつ病の診断は、DSM-5(アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル 第5版」)と呼ばれる米国精神医学会の診断基準に基づいて判断されることが一般的です。
- 抑うつ気分:ほとんどの時間で憂鬱な気分、悲しみ、空虚感、無力感を感じる。
- 興味や喜びの喪失:以前は楽しめていた活動に対する興味がほとんどなくなる。
- 体重や食欲の変化:著しい体重の減少や増加、食欲の減少または増加
- 睡眠障害:不眠(寝つきが悪い、早朝に目が覚める)または過眠(過剰に眠ってしまう)。
- 精神運動の変化:焦燥感や抑制(他者から見てわかるレベルでの動作や反応の鈍さ、逆に落ち着かない様子)。
- 疲労感や倦怠感:ほとんど毎日、極度の疲労やエネルギーの欠如を感じる。
- 無価値観や罪責感:生きている価値がない、みんなに迷惑をかけているなど、自己を否定的に評価している。
- 思考力や集中力の低下:考えることや集中することが難しく、決断力が低下する。
- 自殺念慮や自殺企図:死にたいという考えや、具体的な自殺計画や企図がある。
※以上のうち、①と②のどちらかに当てはまり、合計5つの症状が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。
休養
休養・・・体や心を休めて元気を取り戻すための時間のことです。例えば、疲れたときにゆっくり横になったり、好きなことをして気分をリフレッシュしたりするのが休養です。
うつ病は心と体のエネルギーが著しく低下する状態であり、患者さんは過度な疲労やストレスにさらされると、症状が悪化することがあります。
特にうつ病の初期段階では、無理に仕事や日常活動を続けることが逆効果となり、症状を悪化させることが多いため、一時的に休職や休学を勧めることがあります。
- 心と体のエネルギー回復:体の疲れや心の消耗を癒し、活力を取り戻します。
- ストレスの軽減:日常のストレスから距離を置くことで、緊張が和らぎ、心が軽くなります。
- 自分を見つめ直す時間:忙しい日々を離れ、自分の気持ちや生き方・考え方を再確認する大切な時間を持てます。
- 休むことへの抵抗を乗り越える:「休むことは悪いことではない」と理解し、自分を労わる意識を持つことが重要です。
- 社会復帰に向けた準備:十分にエネルギーを蓄えることで、元気に活動を再開する準備が整います。
薬物療法
薬物療法・・・病気や症状を治したり、楽にしたりするために薬を使う治療のことです。薬には、体の中での働きを助けたり、悪い影響を抑えたりする効果があります。
うつ病の薬物治療は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、症状の改善を目指す治療法です。
特に、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質がうつ病の発症に関与しているとされています。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):脳の中でセロトニンという気分を安定させる物質を増やす薬です。セロトニンが不足すると、落ち込みや不安を感じやすくなります。この薬はセロトニンをしっかり脳内に保つことで、気分を穏やかにする効果があります。
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬):気分を良くするセロトニンと、元気や集中力を高めるノルアドレナリンという2つの物質を増やす薬です。この薬を使うと、落ち込む気持ちが和らぎ、やる気が少しずつ戻ることがあります。
- NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬):脳の中でセロトニンとノルアドレナリンをもっと作るように助ける薬です。他の薬があまり効かなかった場合などに使われることがあります。この薬は、気分を改善しながらリラックス効果も得られることがあります。
- 三環系抗うつ薬:セロトニンやノルアドレナリンを増やす効果が強い薬です。ただ、副作用が出やすい場合もあるため、最近ではSSRIやSNRIがよく使われています。それでも、他の薬が効きにくいときには、この薬が効果を発揮することがあります。
これらの薬はどれも気持ちを楽にするための手助けをしてくれるものですが、それぞれ効果や飲みやすさが違います。
お医者さんと相談しながら、自分に合った薬を選ぶことが大切です。
- 薬物療法にはどのような効果がありますか?
-
うつ病の薬物療法には、気持ちが落ち込むのをやわらげたり、不安な気持ちを減らしたり、やる気を少しずつ取り戻せるようにする効果があります。例えば、薬を飲むことで「気分が少し軽くなった」「寝やすくなった」「朝起きるのが楽になった」と感じる人が多いです。
- 薬を飲んで副作用が出ることがありますか?
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薬が体に影響を与えるために、副作用が起こる場合があります。例えば、体が少しだるく感じる、吐き気がする、口が乾く、眠くなる、頭が痛くなるなどの症状が現れることがあります。これらの副作用は、薬を飲み始めた最初のうちに現れることが多いですが、体が薬に慣れると消えることがほとんどです。ただし、症状が強くてつらい場合や、副作用が長く続く場合は、お医者さんに相談してください。
- 薬を飲んだら、すぐに効果が出ますか?
-
うつ病の薬は、脳の中の働きを調整して気分を良くする手助けをしますが、体が薬に慣れるまでに時間がかかります。多くの場合、薬を飲み始めてから1~2週間くらいで少し効果を感じることができ、3~4週間くらいで「気持ちが軽くなった」と思う人が増えてきます。ただし、人によって効果が出る速さは違うため、時間がもう少しかかる場合もあります。
- 薬に依存性はありますか?
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うつ病の薬は、気分を安定させたり、不安を減らしたりするために脳の働きを調整する薬ですが、これらの薬を飲み続けても、やめられなくなるような依存性は基本的にありません。依存性というのは、薬をやめるとどうしても欲しくなったり、飲まないと落ち着かなくなることを指しますが、うつ病の薬にはそのような特性はありません。ただし、薬を急にやめると、一時的に気分が悪くなったり、体調が不安定になったりすることがあります。これは依存ではなく、薬が体から抜けるときに起こる自然な反応です。そのため、薬をやめるときは、お医者さんと相談しながら少しずつ量を減らしていくのが安全です。
精神療法
精神療法・・・話をすることで心の悩みや不安を解決する治療の方法です。お医者さんやカウンセラーと一緒に、自分の気持ちや考え方を整理し、問題を乗り越える手助けをしてもらいます。
精神療法は、うつ病の症状を引き起こしている心理的な要因に働きかけ、患者さんの考え方や行動を見直すことで、回復を促す様々なアプローチがあります。
- カウンセリング:心の悩みや問題を安心して話すことができる時間や場所のことです。カウンセラーと呼ばれる専門の人が、話をじっくり聞いてくれて、悩みを整理する手伝いをしてくれます。
- 森田療法:心の不安や悩みを乗り越えるための治療法の一つです。この方法は、不安や恐れを「なくそう」とするのではなく、「そのままにしておいても大丈夫」と受け入れながら、自分がやるべきことに集中していくことを大事にしています。
- 認知行動療法(CBT):考え方や行動を少しずつ変えることで、気持ちを楽にし、生活をより良くしていく治療法です。この方法は、私たちの「考え方(認知)」が気持ちや行動に大きな影響を与えるという考え方に基づいています。
運動療法
運動療法・・・体を動かすことで心や体の調子を良くする治療方法です。特に、適度な身体活動は脳の機能を改善し、ストレスや不安感を軽減させ、気分の向上をもたらします。
- 心理的効果:うつ病ではこれらの神経伝達物質のバランスが乱れることが多いため、運動によってそれを補正することができ、結果的に気分の安定化や不安の軽減が期待できます。また、運動による「エンドルフィン(幸福ホルモン)」分泌され、ストレスを緩和し、気分を良くする効果があります。
- 身体的効果:定期的な運動により、筋肉がほぐれ、体全体の血流が良くなることで、倦怠感が軽減され、睡眠の質も向上します。体力や免疫機能が向上し、全身の健康が改善されると同時に、体を動かすこと自体が自己効力感を高めるため、自己評価の向上にも繋がります。
- 社会的効果:定期的に運動を行うことで、日々のルーティンが作られ、規則正しい生活を取り戻すことができます。また、運動が行われる場所(ジムや公園など)で他の人と交流する機会が増えることで、孤立感や孤独感が軽減されることもあります。
経頭蓋磁気刺激法(TMS)
経頭蓋磁気刺激法(TMS)・・・脳に磁気を使って刺激を与える治療方法です。主にうつ病の治療に使われることがあります。この方法では、特別な機械を頭に当てて、脳の一部に磁気のパルス(短い刺激)を送ります。この刺激によって、うつ病でうまく働いていない脳の部分を活性化させることを目指します。
経頭蓋磁気刺激法(TMS)は、うつ病治療において比較的新しい治療法の一つであり、薬物療法や精神療法が効果を示さなかった場合や薬物の副作用を避けたい患者に対して、有効な選択肢として提供されています。
- 経頭蓋磁気刺激法(TMS)にはどのような効果がありますか?
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うつ病などの症状を軽くする効果があります。うつ病になると、脳の中の一部がうまく働かなくなり、気分が落ち込んだり、やる気が出なくなったりします。TMSでは、磁気を使ってその部分を刺激し、脳の働きを元気にすることを目指します。ただし、TMS治療の効果には個人差があり、全ての方に100%効くと断言できるわけではありません。
- 経頭蓋磁気刺激法(TMS)に副作用はありますか?
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副作用が出ることはありますが、ほとんどの場合は軽いものです。TMSは頭の外側から磁気を当てる治療なので、体に大きな負担がかかることは少ないです。ただし、人によっては、軽い頭痛や吐き気、顔面の違和感をを感じることがありますが、時間が経つと自然に治ります。ちなみに、治療中、軽い頭皮のチクチク感や、頭部の小さな叩かれる感覚を感じることがありますが、痛みは少ないです。
- 経頭蓋磁気刺激法(TMS)をしたら、すぐに効果が出ますか?
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すぐに効果が出るわけではなく、少しずつ効いてくることが多いです。TMSは、脳に磁気で刺激を与えることで、うつ病などの症状を和らげますが、脳がその刺激に反応して変化するには時間がかかります。一般的には、治療を何回か受けるうちに徐々に効果を感じるようになることが多いです。
うつ病における3段階の治療過程
うつ病の治療は、一人ひとりの症状や状況に合わせて進められますが、一般的に「急性期」「回復期」「再発予防期」の3つの段階に分けられます。
治療は焦らず、段階ごとにしっかりと取り組むことで、心と体が少しずつ元気を取り戻し、再び快適な生活が送れるようになります。
それぞれの段階で何を目指し、どのように治療を進めていくのかを説明します。
急性期
急性期・・・うつ病の症状が最も強く出ている時期です。この時期は、気分の落ち込み、眠れない、何をするのもつらい、食欲がないといった症状が続き、日常生活に大きな支障が出ていることが多いです。
この段階の主な目標は、症状を少しずつ落ち着かせることです。
- 休養:無理をせず、仕事や家事から少し離れて体と心を休める時間を作ることが求められます。家族や周りの人にサポートをお願いすることも大切です。
- 薬物療法:抗うつ薬を使用して、脳内のバランスを整えることで気分を安定させます。ただし、薬が効果を発揮するには時間がかかるため、少なくとも1~2週間は根気よく飲み続ける必要があります。
急性期では、何かを積極的にしようとするのではなく、「無理をしないこと」「休むこと」に専念することが大切です。
回復期
回復期・・・急性期のつらい症状が少しずつ和らいできて、気持ちや体が回復し始める時期です。ただし、この時期はまだ完全に治ったわけではなく、再び症状が悪化する可能性があるため、慎重な治療が必要です。
この段階の目標は、症状を安定させながら、日常生活を少しずつ取り戻すことです。
- 休養:急性期ほど完全な休息は必要ないかもしれませんが、まだ無理をしてはいけません。日常生活に少しずつ戻りながら、心と体を休める時間をしっかり確保しましょう。趣味やリラックスできる活動(好きな本を読む、音楽を聴くなど)を取り入れると、ストレスを軽減できます。
- 薬物療法:回復期でも薬物療法は引き続き重要です。この時期には、薬を適切に使いながら症状の安定を保つことが目的です。症状が改善してきても、自己判断で薬をやめるのは危険です。医師の指示に従い、必要な期間きちんと服用を続けましょう。
- 精神療法:気分の安定を助け、再発予防の準備を進めることができます。認知行動療法(CBT)では、ネガティブな考え方や行動パターンを少しずつ変えていく練習をします。また、カウンセリングを通して、自分の気持ちや悩みを安心して話せる時間を持つことで、心の負担を軽くします。
- 運動療法:適度な運動を始めることで、気分を前向きにし、体のエネルギーを取り戻す効果が期待できます。最初はウォーキングやストレッチなど、無理のない運動からスタートします。1日5~15分の散歩でも気分転換に役立ちます。
回復期では、適切な治療を続けることで、症状の安定を保ち、再び元気な生活に近づけるようになります。
再発予防期
再発予防期・・・再発予防期は、うつ病の症状がほとんどなくなり、元の生活に戻り始めた時期です。しかし、うつ病は再発しやすい病気であるため、この時期には再発を防ぐための取り組みが非常に重要です。
この段階の目標は、再び症状が悪化しないように予防策を身につけることです。
- 休養:仕事や家事などの日常生活を無理なくこなせる範囲で計画を立てましょう。忙しい日が続いたら意識的に休む日を作ることが重要です。
- 薬物療法:症状がなくなったように感じても、医師の指示があるまでは薬を飲み続けましょう。勝手にやめると再発のリスクが高まります。医師が必要と判断すれば薬の量を徐々に減らしていくことがあります。
- 精神療法:ストレスに対する考え方や反応を見直し、柔軟に対応する力を養います。また、自分の気持ちや状態を整理し、専門家と話すことで安定した精神状態を維持します。
- 運動療法:ウォーキング、ヨガ、軽いジョギングなどを生活の一部にしましょう。規則的な運動を続けることで、体力がつき、疲れにくくなるため、ストレスを感じにくい体づくりにもつながります。無理のない範囲で継続することが大切です。
再発防止期は、元気を取り戻して日常生活を楽しめるようになる時期ですが、再発を防ぐための習慣や対策をしっかり続けることが必要です。
日常生活のケア
うつ病の治療には、薬物療法や精神療法などの専門的なアプローチが重要ですが、日常生活の過ごし方も大きな役割を果たします。
日常生活のケアを工夫することで、症状の改善を助けるだけでなく、再発を防ぐ力にもなります。
規則正しい生活リズムを作る
うつ病になると、朝起きるのがつらくなったり、夜更かしをしてしまったりするなど、生活のリズムが乱れやすくなります。
しかし、規則正しい生活リズムを整えることは、心と体の安定に欠かせません。
自分で実現できるところから始めて、少しずつ規則正しい生活に戻せるようにシフトしていきましょう。
適度な運動を取り入れる
体を動かすことは、脳内で「エンドルフィン」や「セロトニン」といった気分を良くする物質が増えるため、気分が前向きになりやすくなります。
運動は激しいものではなく、無理のない範囲で始めてみましょう。
自分を大切にする時間を作る
自分を責める気持ちを手放し、自分を大切にする時間を持つことができるよう、趣味や好きなことに少しずつ取り組むことがオススメです。
何かを完璧にしようとする必要はなく、「自分が心地よい」と感じられる時間を優先してください。
周りのサポートを受け入れる
うつ病の回復には、周囲のサポートを受け入れることが大切です。
つらいときに一人で抱え込まず、誰かに相談することをためらわないでください。
まとめ
今回の記事は、うつ病に関する知識が得られるように、基本的な情報を解説しました。
- うつ病になると抑うつ状態だけでなく、様々な身体的な症状も引き起こす。
- うつ病になりやすい性格はあるが、環境やストレスなどの要因が複合的に重なって発症してしまうことがある。
- 治療法には休養、薬物療法、精神療法、運動療法があり、症状や体調に合わせてアプローチを取っていく。
- 急性期、回復期、再発予防期の3つの段階に応じた治療法を行っていく。
- 日常的にセイルケアをすることにより、うつ病の回復の助けになる。
うつ病は決して特別な病気ではなく、誰にでも起こり得るものであり、正しく理解し、適切な治療とケアを続ければ必ず回復に向かいます。
この記事を読んで、うつ病に対する理解が深まり、「自分だけがつらいわけではない」と感じていただけたなら幸いです。
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